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旅するインタビュー

2016年12月09日 Daniel Davis

どんな働き方、暮らし方

――世界中で働く仲間と鎌倉でつながる――

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ダニエル デイビスさん

ダニエル・デイビス

14年前に日本に来日。九州〜東京と経て、3年前から鎌倉で暮らし始める。

Operaブラウザのジャパンオフィスでエバンジェリストとしてエンジニア系の仕事をしている中で、「情報を伝えることで、それがほかの会社に役立つこと」にやりがいを感じ始める。
その後ジョインしたW3C(ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム)の一員としてオープンWebに貢献。
現在はDuckDuckGoのコミュニティマネージャーを務めている。

――まず自己紹介をお願いします。

ダニエル:ダニエル・デイビスです。イギリス出身で、来日してから14年くらいになります。途中でイギリスに帰ったりしていますが、鎌倉は今年の八月で住み始めてから3年になりました。

――このシェアオフィスに入居したのは、いつくらいでしょうか?

ダニエル:昨年の11月です。

――DuckDuckGoは検索エンジンと伺っています。こちらのお仕事はいつからなさっていますか?

ダニエル:そちらも公式的には11月からですが、その前はボランティアとしておそらく2012年くらいからちょこちょこ参加していました。なぜかというと一部がオープンソースのプロジェクトで、そこに以前から貢献していました。そしてだんだん増えてきて、仕事としてやっていこうということになりました。

――その前は何をなさっていたのでしょうか?

ダニエル:最初は九州に住んでいて、東京に来てからはOperaブラウザのジャパンオフィスでエバンジェリストとして働いており、特に開発者向きのプレゼンや資料作成の仕事をしていました。はじめはエンジニア系の仕事をしていましたが、だんだん私が好きな役割は情報を伝えることで、それがほかの会社に役立つことにやりがいを感じるようになりました。その次はW3C——Web標準の作成で、日本のオフィスは慶應義塾大学SFCにあったので、それをきっかけに鎌倉に来ました。そのあと、DuckDuckGoに就職しました。

ユーザーのプライバシーを守る、情報を記録しない検索エンジンDuckDuckGo

DuckDuckGoの検索画面

――ダニエルさんに出会うまでDuckDuckGoを知らなかったのですが、こちらはどんな特徴を持つ検索エンジンなのでしょうか?

ダニエル:プライバシーを守る検索エンジンで、基本的に追跡をしません。つまり、誰が検索をしているか、何を調べたかということをログを取ったりしませんし、ユーザーのIPアドレスやuser agent(ブラウザの種類など)をまったく保存しません。その点が好きだったので、このプロジェクトに貢献したかったのです。

――DuckDuckGoはチャリティ団体ではなく会社だと伺っています。それでもボランティアとして活動をしていたのですか?

ダニエル:DuckDuckGoのミッションが、プライバシーを守るという重大なものだからです。

 ――日本にいて、就職試験はどうやって受けたのですか?

ダニエル:就職はオンラインの面接で行いました。1年間ボランティアで働くと、その人の性格ややり方、技術レベルがわかるので、就職の際に調べることはさほどありません。履歴書を出す必要もありませんでした。
就職のときは大学や成績とは関係なく、今までの行動や経験、技術が大切になります。

 ――さすがはアメリカのIT企業ですね。さて、それでは具体的にシェアオフィスではどんな仕事をしているのでしょうか?

ダニエル:役割はコミュニティマネージャーです。DuckDuckGoはオープンソースで開発者向きなので、コミュニティはほぼ技術者のコミュニティとなります。

 ――コミュニティとはどのようなものですか?

ダニエル:技術者のコミュニティを管理する部署で、ソーシャルメディアの活動も入っています。私が以前やっていたようにボランティアとして貢献する人がいれば、その手伝いをします。あとは資料作成や、困ったときにこうしてくださいと頼む、また、こういうことをやりたいというアイディアが出れば、プロジェクトを調整します。そういうグローバルの動きを調整する役割です。

――つまり、ネット上で社員に連絡を取り、円滑に仕事ができるように皆さんの仕事を調整しているということですか?

ダニエル:そうです。社員は世界中にいます。本社はフィラデルフィア、日本は私一人、ヨーロッパ、西海岸、カナダにもいると思います。ほとんどはビデオ会議を利用します。アプリはビデオチャットにはZoom、テキストチャットにはHipChat、タスクマネジメントはAsanaを利用しています。

言葉、時間、距離の壁を乗り越える「念のため」の気遣い

――世界中に社員がいるということは、時差がありますよね。実際には、どのように会議をしているのでしょうか?

ダニエル:アメリカ東海岸に合わせることになりますから、ビデオ会議は日本時間では夜の10時11時くらいに行います。金曜日はだいたい午前1時開始になるので、それがきついですね。時差が日本に住んでいることでの、数少ないデメリットの一つです。残念ながら、技術では解決できない問題です。
会議は多いと30〜40人くらいで行います。これより多くなると考え直さなくてはいけません。会社には人事、コミュニティ、検索技術、ビジネス、デザイン、プラットフォームなどの部があり、最初はその各部のまとめを話し、それからは全員一人ずつ『楽しみにしていること』『不安なこと』を発言します。時々、この時間中馬鹿馬鹿しい冗談を言ったりします。

――ビデオ会議が中心であれば、実際には会ったことのない同僚もいるのでしょうか?

ダニエル:ええ。ネット上で会社を運営をしていると、リアルで会ったことのない人ももちろんいます。今年の5月に会社の大会でアメリカに行き、初めてほかの社員に会いました。
会社のメンバーは世界中にいて、なおかつ実際に会ったことがないので、どうやってスムーズにコミュニケーションできるか、作業がかぶらないようにするかに関しては、GitHubとスラックとフォーラムソフトを使っています。オンラインツールを上手く利用するのが大事です。

ダニエル:国籍は全部違うのでコミュニケーションは英語で行いますが、ほとんどのボランティアは母国語を英語にしていません。インドやヨーロッパの方が多いですね。ボランティアも本当の顔や名前を隠しているため、ユーザー名とアバターだけでやり取りすれば、国籍や男女の別もわかりません。
そういうコミュニケーションにおいては、冗談を言ったりするのはとても気を遣います。軽い皮肉のつもりでも、相手には真剣に受け止められ誤解される可能性もあります。わかりやすく丁寧にコミュニケーションしなくてはいけないのですが、モチベーションを保つためには笑いも必要です。その感覚が、文字だけだとなかなかわからないです。

――離れた場所で異文化の方々とやり取りをするとなると、コミュニケーションの方法に気を遣いますよね。そちらはデメリットになりますか? 

ダニエル:そこまでの問題ではなく「念のため」という気持ちでやっています。「念のため」にここを明確にしよう、とか。私個人のTwitter等では私が面白いなと思っても、他の国では失礼になるかもしれないので念のためにその発言はやめておこうと気を遣います。

――せっかくですから、DuckDuckGoについてもう少し詳しく教えてください。どうしてこんな面白い名前になったのですか?

ダニエル:会社名は社長のガブリエルが考えました。彼が別のスタートアップをやり、その企業が買収されてお金ができたため、何かプロジェクトをやりたいと思って検索エンジンをやろうと考えました。会社にしようと思ったときにDuck Duck Gooseというゲームを見つけて、そこからDuckDuckGoはどうかと言ったら、奥さんがいいんじゃない?と言ったのでそれにしました。

――直感で決まったんですね。

ダニエル:とはいっても、DuckDuckGoの名前が長すぎるというメッセージよく来ます。また、「ググる」のように動詞ができないので困ります。「ダックる?」とかではちょっと……。ただ、このあひるの絵が頭に残るのでいいことだと思っています。会社ではこのマスコットの蝶ネクタイにちなんで、今週一番頑張った人には、Green Bow Tie Awardを毎回送ります。ものではなくて称号だけですが(笑)。

DuckDuckGoのイメージキャラクター

グリーンの蝶ネクタイがトレードマーク

――DuckDuckGoは会社ということでしたが、どのように収益を上げているのですか?

ダニエル:一つはadvertising、広告です。Googleのやり方はあなたの好みによって広告が表示されます。検索したものと関係ないかもしれませんが、そういう者も出ます。DDGはあなたのことがわかりませんので、検索した内容に関する広告を出します。

ダニエル:もう一つはアフィリエイトです。しかし、アフィリエイトをもらっても検索の順番は変えません。検索の表示のアルゴリズムは公開していません。というのも、これを公開してしまうと、HPの制作者が検索エンジンに引っかかるように何かを仕込むかもしれないからです。

ダニエル:それ以外はなるべくオープンにしているので、ユーザー数やトラフィックも全部公開しています。スノーデンの1件のときはかなりトラフィックが増加し、どのくらいプライバシーが重要なのかが世間に認識されました。この右肩上がりのカーブが続けばいいと思います。

――DuckDuckGoには検索以外にも、面白い機能が用意されているそうですね。

ダニエル:Instant Answersというものです。たとえばポケモンでは、モンスターの名前を調べると検索結果と一緒にそのポケモンの情報が得られるので、ユーザーの時間が節約できます。また、タイマーやストップウォッチの機能もあります。ほかにもプログラマー寄りの機能にはなりますが、JavaScriptの関数を調べるとプロパティが出てきたりもします。

――ユーザーとしてはどんな層を狙っていますか?

ダニエル:ターゲットは老若男女を問いません。最初はプライバシーを重視ししているユーザーがメインでしたが、改良を重ねて現在ではほかの検索エンジンと変わらない品質だと思います。おかげさまでDuckDuckGoは今はとても好評を得ています。

――DuckDuckGoのユーザーを増やすには、どんな方法を採っていますか?

ダニエル:あまりadvertisingはしていません。いろいろなやり方を採っています。成功したものとして、2011年で規模が小さかったときに、アメリカのGoogleの近くのビルボードに、巨大な広告を出しました(参考 https://www.wired.com/2011/01/duckduckgo-google-privacy/)。少し怒られたらしいですが、今でも記憶してくれる人も多いほどにインパクトが大きかったです。
あとは小さな驚きを検索エンジンに仕掛けています。ユーザーが自分の意思で広めてくれるのも一つです。たとえばカラーピッカー(https://duckduckgo.com/?q=color+picker+&ia=colorpicker)。そういうものを発見したユーザーは「すごい!」とスクショしてSNSで拡散してくれたりします。検索結果を見るつもりだったのにこんな便利な機能があるなんて!と驚いてくれます。
人数が少ないので、ユーザーとコミュニティの力を使っています。利用した方が、いい機能があったよ、と発信してくれるケースが多いですね。

鎌倉の小さな変化を毎日感じる生活を楽しむ

――それでは、今度は働き方、つまりシェアオフィスについてです。「旅する仕事場」を知ったきっかけは何ですか?

ダニエル:妻が調べてくれました。私は鎌倉でこの仕事が始まる前に、日本オフィスがないので家で働くつもりでした。シェアオフィスの概念は知っていたのですが、あるのは横浜か東京だと思っていたからです。でも、とある会合でたまたま鎌倉にもいくつかシェアオフィスがあると知り、そこからここを知りました。自宅は鎌倉市内なので、今はバス一本で来られます。バイクも使えますし。段葛が開通してからは更に素晴らしいですね。たとえほんの少しの距離だけであっても、段葛を通ってしまいます。

段葛

シェアオフィスの前を通る段葛

――鎌倉の印象はどんなものですか?

ダニエル:湘南は東京よりずっといいです。雰囲気がまったく違います。もちろん海もありますが、特に緑や空間(スペース)がまったく東京と違います。また、毎日観光地に来るのが楽しいです。観光ならその日1日しか見られないのに、毎日の小さな変化や時間の変化を追うことができます。

――シェアオフィスを借りたことでのメリットはありますか?

ダニエル:たくさんあります。一つは皆が違う仕事をしているので、プレッシャーがありません。会社のような繋がりや込み入った人間関係がないので、気遣いをしなくて済むからです。 会社にいるけれど会社からは離れて休憩できているのがいい点です。
それから、ランチ会や座禅会がありますね。1回参加してみたのですが、坐禅はきつかったです(笑)

――それでは、答えにくいかもしれませんが……シェアオフィスを借りてのデメリットはありますか?

ダニエル:何かあるだろうと思ったのですが、特にデメリットは感じません。落ち着いているし、まさに湘南スタイルでいいですね。窓を開けて風を感じたり、自由にできます。騒音なども気になりませんし。
ただ、あえて言うのであれば自分のモチベーションを普通の会社よりしっかりしなくてはいけません。シェアオフィスだと、今日は寝坊しちゃったからさぼっていいかなと思ったりしてしまいます。特に、時差の関係で昼からは誰もオンラインにいないので、見ている人がいませんし(笑)。
なので、スケジュールのやり方などを自分できっちり管理して仕事をしなくてはいけません。もちろんある程度は常識ですが(笑)。
それに、ほかの仕事をやっている人を見ると、自分も頑張ろうという気持ちになります。うーん、すごくわがままを言ったら、自分の机があればいいです。今はカウンター形式なので……(笑)

――それはちょっと難しいリクエストですね(笑) では、鎌倉という土地で働くメリットは何かありますか?

ダニエル:すべてが便利な点ですね。東京では、いつも電車や地下鉄使わなくてはいけなかった。しかし、鎌倉はすべてが歩ける距離にあり、そこがCoolです。観光地で特に夏は人が多いですが、この街には歴史と自然があります。たとえ見えなくても、海の存在を間近に感じますし。職住接近が可能で、人も落ち着いています。

――反対にデメリットはありますか?

ダニエル:デメリットはほぼありません。強いて言うならちょっと物価が高いことですね

――確かに、食事は毎日のことなので困ることはありますね(笑)。

ダニエル:でも、探せば安いお店もありますから。鎌倉に引っ越した当時はSFCまでが遠かったのですが、それでも住み始めると鎌倉での暮らしは最高だと思えました。DuckDuckGoの仕事をするようになって、より、鎌倉がいいところだと思えるようになりました。東京に行くのも電車で一本ですから、たまに東京へ出るときも不便さは感じません。ただ、技術者向けのイベントなどは東京が多いですね。

――最後に、次の目標はありますか? たとえばこのシェアオフィスでこういうことをやってみたい、という漠然としたものでもいいので、ぜひ教えてください。

ダニエル:DuckDuckGoは、今ではSafariやFirefoxの検索エンジンの一つに採用されたりしています。会社自体はもっと一つのことに集中しないといけない時期なので、要望の多いプライバシーを保つメールサービスや、プライバシーを保つブラウザなどの開発は考えていません。検索エンジンを開発改良し、よりユーザーのためになるものにしていきます

ダニエル:個人的には、私は日本人向け——英語の国以外に最適化したいです。日本人のユーザーに、より使いやすくなるようにしたいと思っています。コミュニティを楽しく効率的にしたい、世界中にあっても一つのコミュニティと感じられるようなものにしたいと思っています。
ジャパンオフィスはまだ先だと思いますが、DuckDuckGo Japanを認めてほしいです。日本にもTwitterのアカウントがあり、ユーザーの質問に答えたりしています。徐々に日本人のDuckDuckGoファンを増やしていきたいです。
そうそう、一度このシェアオフィスにDuckDuckGoのイベントをやってみたいですね(笑)

――イベントは楽しそうですね! それでは、長い時間、たくさんのためになるお話を聞かせてくださって、ありがとうございました。

インタビューを終えて

七尾すずさん
インタビューアー七尾すずさん

一人オフィスの方が多い仕事場で、ダニエルさんの働き方はまさにグローバル。世界中にスタッフがいるため、どのように仕事を円滑に進めるのかを教えていただきました。 英語の検索エンジンは敷居が高くて使ったことがなかったけれど、DuckDuckGoの様々な機能には魅了されました。早く日本語化されるといいですね。

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